石垣と組織

加野 孝

出張のついでに、浜松城に立ち寄る機会がありました。

事前に予備知識がなかったのですが、浜松城は徳川家康がまだ若いころに10数年居て、のちに大成したという「出世の場所」だそうです。また家康自身だけでなく、部下の幹部たちも、浜松城を経て重要な役職に就いていった事例が多いところからも、「出世城」と呼ばれているようです。

桜がにわか雨に揺れる中、浜松城を訪れました。

お城は、コンパクトなものだったので、いつになく、しげしげとお城を眺めることとしました。そこで目についたのが石垣です。浜松城の石垣は「野面積み」という方式で積まれています。野面積みは自然石をそのままくみ上げていき、隙間には小石をいれていくという工法。隙間が適度にあるので、水はけがよく、揺れにも強いそうです。隙間は、かえって強度にとってプラスなのですね。凹凸があるので、上りやすいというデメリットはあるにはあるようです。また、自然石を積み上げていくやり方なので、一定以上の高さに積み上げるには、限界もあるようでした。戦国時代〜安土桃山時代初期に野面積み工法は用いられたということで、次第に別の工法が開発されていったとのことでした。「野面積み」工法は加工がいらず、一定の高さまでなら、強度もあり、排水の心配もなく、とても重宝されたようです。

野面積みの石垣の上に立つ出世城、浜松城

ほかの城はどんな石垣なのだろうと当然興味が出てきまして調べますと、次の2つがありました。

  • 打ち込み接ぎ(うちこみはぎ):安土桃山時代末期〜江戸時代初期に見られ、代表例は姫路城、熊本城、松山城など。接着面のみ加工して積む。
  • 切り込み接ぎ(きりこみはぎ):江戸時代前期〜幕末に見られ、代表例は江戸城、大阪城、二条城など。接着面だけでなく、全方位加工して「方形」にしたものを積む。

このように調べてくると、すぐにでも、それぞれのお城を訪問したくなってきます。

打ち込み接ぎ、切り込み接ぎは、加工が必要である反面、堅牢で、より高い石垣を造ることができるとのことで、広まっていきましたが、難点は水はけが悪くなる点です。密着していると安定はするのですが、排水溝の設置が必須となります。

このような石垣の工法を比較してみると、私たちの経営における組織設計にヒントとなる視点があるように思います。

どんどん事業規模が大きくなると、自然石を組み合わせるだけのやり方、つまり、一人ひとりの社員に自由に活動してもらうだけだと、限界も来る。やむをえず、接着面を加工したり、方形に加工したりするがごとく、組織に規定やガバナンスプロセスを導入し、管理を強化していくことが必要になっていく・・・似ていますよね。

一方、堅牢にすべく、石を加工し、隙間をなくした石垣には、水はけの悪さがあります。これも、組織の内部に、管理や規定を多くし、いろいろなものを標準化していく中で、自由闊達さが失われていくのと似ていますね。

1つの壮大な石垣と城を造るのか。それとも、コンパクトな城を複数造るのか。それによっても、石垣の組み方が変わるのと同様に、1つの超大型組織をつくるのか、それなりの規模の組織体を複数構築し、持ち株会社にして、事業会社の機動性を担保するのか。

1つの大きな城と石垣で行く(大人数の単一組織の)場合、排水溝(組織における風通しの確保の仕組み)は、どのように設計、運用するのか。

石垣と組織づくり。城づくりと組織づくりは、照らし合わせて考えてみると、含蓄が深いと思いました。

今度、皆さんがお城や石垣の近くを訪れるときには、石垣の前で、5分だけ自社の組織設計に思いをはせるのも面白いかもしれません。