横顔

加野 孝

「横顔」という言葉をよく見かけます。
辞書で引いてみますと、以下のような説明があります。

  • 横向きの顔。 横から見た顔。
  • ある人の、一般にはあまり知られていない一面。プロフィール。

人と会っているとき、皆さんはどんな横顔に気づくことがありますか?
皆さんの横顔は、どれくらい人に知られているでしょうか?

長くお付き合いをしていると、たくさんの横顔をお互いに見せ合うことになります。
たくさんの横顔を見せ合ったうえで長続きしている人間関係は尊いものだとつくづく感じます。

ビジネスの現場で接点のある方について、どんな横顔を知っているでしょうか?

あの人は、▲という資格を持っている
あの人は、〇〇大学卒業だ
あの人は、〇〇会社の役員だ
あの人は、理系だ
あの人は、資産家のご子息だ
あの人には1000人の部下がいる

このようなものは、横顔とはいえないと思われます。
一般にはあまり知られていない一面が横顔だからです。

では、一般には知られていない一面とはどういうものでしょうか?

柚子胡椒が苦手だ
K-POPアイドルの〇〇のファンだ
昔、▲という意外なバイトをしていたことがある
実は卓球がうまい

こうしたことは、積極的に本人が発信していない限り、一般には知られにくいと思われます。

では、もっと知られにくい側面とはどういうものでしょうか。

大事にしていること、価値観
一番誇りに思っていること
一番後悔していること
修羅場体験
激レア体験
一番迷っていること
一番嫌いな仕事
苦手なタイプのひと
週末や夜の時間の使い方

なかなか、一般には知られていなさそうな事柄です。

世の中には、手っ取り早く新しい人に出会うためのネット空間上の場所であるとか、紹介する会社などは無数にあります。

しかし、「一般に知られやすい特徴・属性」をもとに人は人を検索し、紹介し、その特徴から相手をとらえます。

多くの場合、本当の相手の特徴や人柄、価値観、強み、特技などはわからないまま、表面的な理解をするだけで、時が経過していくケースが多いのではないかと私は考えています。

お医者さんから、文学のことを学ぶことができたり、
30歳年下のひとから、古典について教えてもらうことができたり、
超高齢の方から、SNSの活用について学ぶことができます。
人もうらやむピカピカの学歴、キャリアの人から、挫折の乗り越え方を学ぶこともできます。
技術畑の研究開発者の方から、営業・マーケティングに大切なマインドやスタンスを学ぶこともできます。

どの人がどんな特技をもっているのか、
どの人に、どんな素敵な一面があるのか、
パッと見や属性、一般公開されている基礎情報だけでは到底わかりません。

長い付き合いの友人たちをみていても、少し連絡をとらない間に、いろいろな出来事、勉強や修羅場を経験していて、驚かされることもしばしばです。

異業種交流会やネット上の紹介業者などを介して、新しい人と出会うということが簡単にできる時代です。

出会う人の「量」にかんしては確かに、そのような方法で増やすことができるかもしれません。

しかし「関係の質」「お互いに相手を知っている深さ」についてはどうでしょうか?
「出会い方」についてはどうでしょうか?

狙って親しくなれる人間関係というのは、あるようでないように思います。
また、安直な出会いを直線的に求める場には、近づかない人たちが多いとも感じます。

あなたは知人友人の「横顔」を何種類知っていますか?

あなたの「横顔」のうち何種類を相手は知っていますか?

人脈の数ではなく、1つ1つの人間関係における「横顔」の数を棚卸してみると、なにかの傾向に発見があるかもしれません。

「横顔」を知ることで目の前の人の、思いがけない特技に出会える秋になるかもしれません。
「横顔」を知ってもらうことで、相手に思いがけない貢献ができるかもしれません。

これから年末年始にかけて、人との交流が活発になりやすい季節です。
今年の秋冬は、いつも以上に「横顔」を意識した交流をしてみませんか?