オンライン会議と検索エンジンでは、手に入らないもの

加野 孝

限られた時間を有効に使い、最高の生産性を実現するために、オンライン会議や検索エンジンの活用は不可欠な時代です。私自身もオンライン会議、検索エンジンを使わない日はありません。

これらの道具(オンライン会議、検索エンジン)は私達にとって便利なものですが、長い人類の歴史の中ではまだまだ歴史が浅い道具だと言えるでしょう。

もう少し歴史が長い道具と言えば、自動車、新幹線、テレビなどが思い浮かびます。私達は、これらの道具と共に、どのような活用の歴史を歩んできたのでしょうか。

私達はどのような時に自動車を使い、どのような時に徒歩で移動するのでしょうか。
私達はどのような時に新幹線を使い、どのような時に在来線を使うのでしょうか。
私達は、どのような時にテレビによる情報収集で満足し、どのような時に他の手段を用いて情報の収集を続けるのでしょうか。

これらの問いに、私達はそれなりの持論で答えられるのではないでしょうか。

一方、次の問いについて、皆様はどのような持論で回答できますか?

  • どのような時にオンライン会議で済ませ、どのような時に足を運んで対面会議をするか?
  • 何は検索エンジンで手に入れられ、何については手に入れられないのでしょうか?

いまだ、上記の問いには明快な答えを持てていない方も多いのではないでしょうか。

オンライン会議への過剰依存をすることで何を見過ごすでしょうか?
検索エンジンでは見つけられないものは何でしょうか?

まず、初めにオンラインか対面かについて考えてみましょう。

実際に足を運んで現地の街の空気を吸い、喧噪に塗れる中で思い出すことがあります。実際に人と会って、握手して湧き上がる感情があります。21年前に留学したフランス・パリのビジネススクールに足を運び、クラスメートと現地で再会し一日を過ごす・・・そんなひと時が先日ありました。母校の校門前で初めて思い出すこと、友人と21年前に再会を約束した場所で再会した瞬間に思う事がありました。21年のブランクを感じないほどの、そこには揺るぎない絆を感じました。おそらく友人にも私にも記憶に残り続ける一日でしょう。

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21年ぶりに訪れたフランス留学時代の母校(パリ11区, ESCP-EAP校舎)
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21年ぶりに再会したパリ留学時代の同級生HERNANさんとの再会直後の写真(リヨン駅にて)

経営で様々な人と信頼関係を積み重ね、人を動かしていく際に、オンラインで軽率に済ませ過ぎないこと、丁寧に場を共有することの大切さや威力を思い起こさせてくれました。

人は、アジェンダをセットしたオンライン会議の積み重ねだけでは動いてくれません。

さて、その旅で、パリのオルセー美術館を訪れる機会もあり、そこで2つ目の問いにある「検索エンジンで手に入るものと手に入らないもの」ということについて考えさせられる機会もありました。

オルセー美術館を巡り歩く中、まず序盤に最上階フロアーに行き、有名かつお目当ての絵を鑑賞する楽しみを満喫しました。

その後、最上階から1つずつフロアーを降りてきたとき、思いもよらぬ展開が最後にありました。
最後にみた1階のフロアーでの出来事です。

これまで見たことのない絵に偶然、めぐり逢い、魅惑され、しばらく絵の前から動けなくなったのです。壁一面を使う位の大きな作品でしたが、私はそれまで知らない絵でした。先入観もなく、ただただ直感的に面白いと思って眺めていた時間でした。

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オルセー美術館で遭遇した大型絵画前の筆者

検索エンジンで普段あこがれていた有名作品の鑑賞とは一味違う、予定外の体験でした。
予定外の出来事には、驚きがあります。事前の予定調和ではないので、なにか無防備な心の中にダイレクトに入り込んでくるようなインパクトがあります。見たこともないので、一所懸命隅々まで見ようとする自分もいます。

「検索しないで、偶然に遭遇する」ということの良さがそこにありました。

もう少し検索について考えてみましょう。

自分による検索作業は、自分の打ち込んだ検索キーワードで展開されます。とすると、自分の検索キーワードの語彙の限界が検索範囲の制約条件になりえます。また、言語化されきっていない「モヤモヤ」も検索エンジンでは検索されません。検索には便利さとともに、限界もあることが推察されます。

では、「情報や知識の検索」だけでなく「人間の検索」については、いかがでしょうか。

自分の人生にかけがえのない知識、情報をもたらしてくれた人が皆さんにも何名かいるかと思いますが、そのような方との出会いはネット検索による出会いや、探そうとして探した結果なのでしょうか?

人との出会いはどこにチャンスがあるかわからないと感じます。

ふとした出会い、知人による紹介、なにかの交流の場での出会いの中に、後の人生に有益な知見、情報をもたらしてくれる人が多々潜んでいるのだと思います。

目的を掲げてそれを主眼にして関わってくる人間関係はともすれば打算過剰となり、乾いた関係になりやすくないでしょうか。すぐ近づいてくる人はすぐに去っていくとも古来より言われます。

仮にそうだとすると、検索で目的に向けて直線的に拙速に出会おうとする出会い方以外に、皆様はどのような人との出会い、めぐり逢いの場をもっているでしょうか。

知識・情報に加え、人間の検索、人間との出会い方においても、私達には検索エンジンとは別の工夫が必要に思われます。

私は、経営者が欲しているが、「検索エンジン」では手に入らないもの、「オンライン」では体験しにくいことがあると考え、そこにリーチできるものを世に提供すべく、パッションクエストを起業しました。

一言で言えば、それは「セレンディピティー」です。

「セレンディピティー」とは、『求めずして思わぬ発見をする能力。思いがけないものの発見。運よく発見したもの。偶然の発見』と訳されます。

外食の楽しみに例えるとわかりやすいかと思います。

私達は、外食の際、自分で主体的にメニューから食べたいものを選び、自分が求めている味を堪能するという喜びがありますが、その一方で「シェフにお任せコース」で何が出てくるかをあえて委ねて楽しみに待つ喜びもあります。そのどちらも価値がありますね。

パッションクエストは、経営という名の冒険、探検に挑む経営者のあなたに、自分の検索だけでは行きつかない知見や人に遭遇する「シェフにお任せ」的なセレンディピティーを兼ね備えています。

問いかけて自分で考えて答えを出すというコーチングの良さをベースに保ちつつ、あえて全く予期も想像もしない人や知見との遭遇機会がちりばめられているサービスです。

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No Serendipity, No Innovation.