創業の経緯や目的

パッションクエストの創業者である加野孝は2008年以来、十数年に及ぶ経営者、経営幹部との伝統的なコーチング実践を通じ、エグゼクティブ・コーチングの意義や効果を数百名のクライアントの皆様と議論してきました。このような実体験をもとに、もっとクライアントに喜んでもらえるやり方があるのではないか? と日々考え続けてきました。

2008年から2021年まで、コーチングを主業とする人材開発専門会社で専門家としてコーチングに従事してきましたが、2020年コロナ禍に突入。世界の様相は一変しました。

50歳の節目を目前にした私は、これまでの延長線上の仕事では、この激変する世界で役に立ち続けていくことは難しいのではないかと直感していました。何かを変えないとこの激変には対応できないのではないかと感じたのです。

混乱と混迷を深める世相の中、私の思考を支えてくれたのは起業家だった祖父の遺した、「独創に生きる」という言葉でした。

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祖父・加野五郎

家業の醸造業を継承せず、恩師を頼って当時としては画期的なドイツ留学まで行い、先進的な電子計測機器を発明した祖父、加野五郎。残念ながら、私の生まれる前に他界していたため、直接祖父の話を聞くことはありませんでしたが、幼いころから、人と違うことを行うことの意義を説いた祖父の言葉は、家庭内で何度も何度も聞かされていました。

  • 経営者支援サービスが提供しているものと、経営者に必要なものとのギャップは何だろうか?
  • 経営者支援に際して、自分が活かせる独自性があるとすれば何だろうか?
  • 今以上に経営者のパフォーマンスを高めるには、どのような経営者支援サービスがあると良いだろうか?

このような問いを立て、祖父の言葉に背中を押されて、思い切りユニークなサービスを世に発信し、提供してみたいと考えるようになりました。

私はサラリーマンを2021年に卒業(退職)すると、あえてすぐには起業はせず、大学院に入学することにしました。過去の活動の延長線上で、拙速に起業してもさして独創的なものは生み出しにくいのではないか。この激変の世相の中、一度リセットして学びの時間をとるのが最適ではないかと考えたからです。学びを刺激するコーチの自分が長く学んでいないことを痛感していたのです。

私の学びは、20年前の社会人大学院(MBA)でリーダーシップ、キャリア、モチベーションを中心に研究したことや、コーチングの実務を通じた組織文化への働きかけ、社内コミュニケーション、リーダーシップの向上など、会社の「中」のことにかなり偏っていると感じていました。

しかし、実際の経営は社内だけでなく社外の多種多様な利害関係者との対話やコミュニケーション、交渉、意思決定で成立しています。こういった「外」の利害関係者とのコミュニケーションについて学ぼうと考え、2021年春、広報PRやブランディングを学ぶべく、人生二度目の社会人大学院の門をたたきました。

十数年間、コーチング三昧の生活をしてきた私にとって、コーチという名札を脇に置いて異分野の多様な仲間と共に広報・パブリックリレーションという未知の領域を学んだことは、非常に価値のあるリフレッシュと自己成長の機会となりました。コミュニケーションについてはそれなりに探求してきた自負がありましたが、いかにこれまで捉えてきたコミュニケーションというものが、限定的なものであったかを思い知らされる日々でした。

2年間、新しい仲間と新しい領域を学ぶ中で、自然と独創的なサービスを構想する作業も進み、世に問いたい新サービスも描くことができました。そして、大学院卒業と同時に、2023年4月、パッションクエストの船出をすることとしました。

結果としては、エグゼクティブ・コーチングとかなり異なる業態となりましたが、よりよい経営者支援、そして「独創に生きる」という祖父の言葉を自分なりに探求し続けた結果、たどり着いた形です。